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8話
むつに追い払われるようにして、外に出たりぃは西原から狐を受け取り、礼を言った。
「むつ様は…?」
「引き受けてくれた。悪いとは思ってる…こんな事させて、辛い事ばかりをさせてるからな」
西原から少し離れると、りぃは溜め息をついた。そして、むつが1人残っている方を見ていた。外からはただの民家にしか見えない場所だが、内部はそうではない。それごと、むつの力を借りて焼き尽くして貰おうというのだ。
「…まだ息のある者も居ましたよ?」
「気付いていたのか。なら、むつも気付いてるかもしれないな…」
「主は最低です」
「むつにも言われたな」
はぁと溜め息をついて、りぃは民家から少し離れた場所にある大きな木に寄り掛かると、ずるずると座り込んだ。
「…嫌われたな」
「それ以前の問題です」
狐がきっぱりと言うと、りぃは再び大きな溜め息をついた。




