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8話
ちゃかすようにむつが言うと、りぃは目を細めてむつを見た。むつは口では軽い事を言っていても、無表情のようだった。
「お前の存在は知られてる。だが、どうこうする気はないだろうな。今の所は…来て貰えたら、喜ばれるだろうが」
「行かないって。ねぇ、あと1つ…彼らは本当に能力があったの?」
「微かに、な。俺は…こんな状態になったやつらが警察に運ばれて調べられるのは可哀想だと思う。可哀想…少し、違う気もするが…調べても身元もないんだ。帰る場所はない…それなら、と思う」
「それを、あたしにやらせようって?」
「酷い話だろ?」
「最低よ。けど、やるよ…帰る場所がない、かぁ」
むつは低く呟いた。りぃも微かに頷いてませた。むつはすっとりぃの手を取った。皮の手袋をしていても、むつの冷たい手からすれば、暖かく感じられた。
「帰る場所、あるの?」
「俺か?俺は…ないな」
「うちに来てもいいよ?」
「…俺はこっち側でいい。お前が守る者なら俺は狩る者って事になるがな」
「冷たいなぁ…」
りぃは何も言わなかったが、むつの手をぎゅっと握った。




