8話
そう言われたむつは、首を傾げながら胸をぺたぺたと触ってみた。むにっと指が沈むような、柔らかい胸をりぃは見ていた。
「…かな?え、でも、あれって牢番でしょ?でっかい男」
「…でっかい男?いや、細身の陰険な男だが」
「食い千切ったのは、地下牢の男だけだもん。陰険なのは知らない…あたし、らじゃない」
食い千切ったのはむつじゃない事は、りぃも重々承知はしているだろうが、むつはあえて、あたしらと言った。京井がやったと言うのも嫌だったのだろう。
「死んでたぞ?腰の辺りを深々と食いちぎられてた」
むつは、ゆるゆると首を振った。りぃは狐を抱いたまま、ふーむと唸っている。
「まぁいい…むつ、やってくれるか?」
むつは少し悩みながら、冬四郎と西原の方を見た。2人とも折角の証拠を易々と、消してしまいたくはないのだろう。
「条件がある」
悩んだすえに、むつはやるとは言わずに条件があると言い、その条件を言おうとしたが、りぃの人差し指がむつの唇を押さえていた。
「分かった」
「まだ言ってない」
「どんな条件でも飲んでやる」
「…っうぅ、酷いそれは。なら、条件いっぱい付けるからね」
「…出来る事にしてくれ」




