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8話
「…どこ?」
「ちょっと私でもこの中では…煙が多すぎて鼻がききませんし、音で耳が…」
すがるような目をしていたむつに、京井は申し訳なさそうな顔をして言った。むつは、そうだねと頷くとそろそろと瓦礫の中を歩き出した。煙が少なくなってきても、真っ暗な室内では何も見えない。
むつが手のひらに炎を浮かべたが、京井がぱしっと手を取って消してしまった。
「…敵に居場所を教える事になります。瓦礫の中、どこに居るか分かりにくくなってます…また爆発でもされたら」
京井の言いたい事は分かるが、そうなると西原を見殺しにする事になってしまう。姿が見えないうえに、声も出さないとなると、瓦礫の下敷きになっている可能性が高い。それを探せなくなるとなると、むつは焦った。
「せんぱーい!!」
咳き込みながら、西原を呼んでも返事はない。むつは、煙で痛む目を擦りながら、辺りをきょろきょろと見回した。
「…ま、むつ様、こちらです」
「狐さん?こっちってどっち?」
「もう少し前に、右の方です」




