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8話
むつが何かを言いかけると、どぉぉんっという音と共に強い風が吹いた。飛ばされかけ、むつは京井の腕に抱き止められていた。京井はしっかりとむつを抱き、片手で風によって飛ばされてくるものを防いでいた。
「…に?」
「自爆したようです」
「嘘っ‼」
ぱっと京井の腕から抜け出そうとするむつを京井は引き止めた。またしても大きな音が、びりびりと響いた。心臓に響くような程に、音が大きく振動しているのがよく分かる。
「むつ、京井さん‼大丈夫ですか!?」
冬四郎が駆け寄ってくると、むつは頷いた。むつは京井に守られ怪我はなかったが、京井は飛んできた物が当たってか、額から血を流している。
「…っ‼遥和さん…せ、先輩と片車輪は?」
「わしは無事やけど…」
あちこちから血を流してはいても、片車輪は無事そうだった。だが、西原の姿は見えない。爆風で壁も床、天井の一部が落ちている。煙も酷くて視界も悪く、むつはごほごほと咳き込んだ。
「…っう」
「先輩!!」
微かな呻き声に、むつは京井から離れた。どこからか、西原の声がしたが、西原の姿は見えない。




