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8話
「…無事、逮捕みたいですね」
京井は下敷きになった男に、ちらっと視線を向けただけで知らん顔して冬四郎と西原に笑いかけた。
「むつは気が済んだのか?」
「びみょー」
「何だよ、びみょーって」
「みんな遥和さんに取られて活躍してない」
「活躍しなくてないのか?そんなに汗かいてて?」
「熱ですよ、熱」
むつの代わりに京井が冬四郎に言うと、冬四郎は渋い顔つきになった。何か言われると思ったのか、むつはこそっと片車輪の後ろに隠れている。
「西原君、通報してくれるか?他も色々調べれば、むつが監禁されてた証拠も上がってくるだろうからな」
冬四郎に言われた西原は携帯を出して、電話をかけようとしていたが、何かに気付いたようで、目を細めている。西原の視線を冬四郎も追うと、床に伸びていたはずの男が、諦め悪くゆっくりと身体を起こそうとしていた。




