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8話
「…ここまでしたんです、あとは本人の自由にさせましょう。逃げたければ逃げるでしょう。それよりも…こっちも囲まれてます」
むつは片膝をついた状態で、すぐ後ろにいる京井に寄り掛かりながら辺りを見た。誰の姿も見えないが、壁の向こうから嫌な感じが漂っている。
「どういう事?部屋の回りに廊下でもあるって事?」
「おそらくは…ここは特別な監視部屋なんでしょうね。姿が見えないと、やりにくくて仕方ありませんね」
「…任せて」
言うより早く、むつは手のひらを壁の方に向けていた。ごおっと熱風と共に炎が上がり、蛇のようにうねりながら壁に当たると左右に別れて、壁を隅々まで被った。部屋の中がオレンジ色の炎に包まれ、ばちばちと音を立てている。
京井の身体から離れたむつは、燃え盛っている炎の中に飛び込んでいく。勢いよく飛び上がり、膝で壁を打った。ぼこっと穴が開くと、続けざまに穴に足を突っ込むようにして、穴を広げた。そして、躊躇せずに穴に手を突っ込むとまた炎を発生させた。




