8話
だが、これなら台を壊すか、持ち上げるかして鎖を引き抜けば良いだけだった。むつは台に足を置き、鎖を引っ張って台の足を折ってしまおうというつもりのようだ。
「いけませんよ」
「それ、は…どっちの意味?してはいけない?それとも、あたしとは行けない?」
むつはすでに歯を食いしばって、鎖を引っ張っている。台の足は、ただの木のようだが、簡単に折れるほど細くはない。
「…どっちもです」
「何で?そこに居ても…だって、自分の仲間たちを殺して回ってるやつらと一緒に居たいの?」
「外に出て、どうするのです?私は、ずっとここに仕えてきてるのですよ?外に出て行く場所は?」
「…場所?他の化け狐たちと一緒に過ごしてもいいし、自分の好きな所に行ってもいいんじゃないの?つーか…仕えてきてるってさ、自分の意思なの?…おわっ‼」
手汗をかいてきたからか、手から鎖がするっと滑って、むつは尻餅をついた。すぐに起き上がると、今度は手が滑らないように、鎖の穴に指を引っ掻けるとまた引っ張りだした。
「私の一族は長くここに仕えてきてるのです。同じ妖を殺める事に賛成は出来ませんが…従わねば生きてこれませんでしたから…もう、それが当たり前のようになってしまってます」
「化け狐でも一族とか何とかってあるんだ?」
「人と同じで家族のようなものです。私が逃げれば、みなも危険な目に遇うかもしれません」
「家族愛か。で、あなたがあいつらに殺されたら?悲しんでくれるの?」
「…それはないでしょうね。殺されても仕方ないと、それだけのしくじりをしたという事ですから」




