8話
もしかしたらと思いつつ、むつがドアを開けようとしたが、鍵がかかっている。がちゃがちゃとドアノブを回していたが、開かないと分かるとむつは京井の方を見た。京井は前足を突っ込むようにして、ドアに穴を開けた。ばりっばりっと何度か足を突っ込んで、むつが通れるくらいの穴を開けた。
「…ありがとう」
むつが穴を潜って入っていくと、そこはキッチンのようになっていた。だが棚に埋め込むようにして、何台ものモニターが置かれていた。
「…凄い。ここで監視してたってわけか」
素直に感心してか、むつが部屋を見渡しながら言うと、部屋の隅でかたんっと音がした。
「むつ、様?」
「狐さん。良かった無事だったんだ」
隅で縮こまっている狐にむつは駆け寄った。電気はついてないが、モニターが映っているから、ほんのりとは明るい。むつは躊躇いもなく、狐を抱き上げようとしたが、途中で引っ張られるようにして、がくんっとなった。
「…用のない時は鎖で繋がれてるんです」
「用のない時って…」
「生きてらしたんですね。犬神に食われてしまったとお聞きしてましたが」
「うん。まぁ…何でもいいや。一緒にここから出よう?」
むつは狐の足に触れて、そこから鎖を辿っていく。モニターの置かれている台の足部分に、しっかりと固定されている。




