8話
「ここが…1階に当たる所ですか?」
「ううん、地下と1階の間…踊り場的な所のはず。あたしは、ここに連れて来られてたの」
階段を上がりドアを開けると、眩しい光と、むわっとする消毒液のような薬臭さにむつは顔をしかめた。地下の半分くらいの広さだろうか。ぐるっと見渡せる範囲に大きな椅子があり、歯医者にあるようなライトが備え付けられている。
むつと京井は歩きながら、室内を見渡した。
「…棚のは薬品ですね。どれもラベルには数字しかありませんから…何が何だかさっぱりですね」
「うん。どれかが、使われてたと思うんだけど…あてしもそこまでは分かんないや」
戸棚を開けたむつは手を突っ込み、中の小瓶を床に落として割っていく。
「出よう。何もないと思う…ってか、専門外すぎて何にも分からないし。不愉快」
「…そうですね」
京井はあまり興味がないのか、上にあがる階段の方に、さっさと向かっていく。段数の少ない階段の先にあるドアの方からは、怒鳴り声と大きな物音が聞こえてきている。
「礼状もなしに踏み込めば、あんな感じになっちゃうのかしら?」
「あっても、あぁなると思いますよ」
京井は太い前足を揃えてドアにあて、体重をかけるようにして、めきめきっとドアを破った。




