8話
「…取れましたよ。目が眩んで少し狙いが反れてしまいましたが…まぁ問題ないでしょう」
「うん…あたしも目がちかちかする。ありがとう…死んじゃった?」
「いえ、生きてますよ。まだ」
べちゃっと京井は何かを吐き出すと、ぬるぬると濡れた鍵束をむつの手に押し付けた。
「ん、ならいいよ。ありがと…あたしからの仕返しは遥和さんが代わりにしてくれたと思っとく」
「そうしてください」
むつは再び、手のひらの炎を灯した。ちろちろと揺れる炎をかざして、ううっと呻いてる声の方を見た。むつに余裕を見せていた大柄な男が、脇腹を押さえて床に倒れている。指の間からは、とろとろと血が流れている。
「まっずいものを口にしてしまいましたよ」
京井は吐き捨てるように言い、太い前足で口を擦っている。口の回りには真っ赤な血がついている。
「鍵と一緒に腹を食いちぎったもんね、そりゃ最悪だわ…後でうがいしないと」
男が腰にぶら下げている鍵束を取ると為に、むつが炎で目眩ましをして、そのすきに京井が鍵を取ったわけだが、その時に男の脇腹を一緒にえぐっていた。男は呻きながら、むつを見上げているがもはや立ち上がる事は出来ないだろう。むつの足元に、男の腹の一部が落ちている。その肉片は大きく、男が手で押さえている場所からは、内臓のような物も見えている。
「…むぅちゃん?」
「手当てが早ければ助かるね、きっと」
「えぇ…」




