8話
むつは興味深そうに、棚に置かれている物を見ている。がちゃっと手枷を持ち上げると、忌々しげに睨むとすぐに棚に戻した。
「…どうしました?」
「あたしも…これ…だから、力出せなくて」
「そうでしたか…普通の物ではありませんね。これ着けると力が出せないかもしれませんね」
京井もその手枷を持つと、めきめきっと握った。石のような鉄のような手枷が、だんだんとへしゃげていく。むつは手枷と京井を交互に見ている。
「…調べたいけど、きっと無理だろうね」
「なかなか、賢い連中のようですね」
へしゃげた手枷を興味なさそうに棚に戻した京井は、棚にあるナイフを手に取りむつに渡した。
「人は切れないようです。我々に効果のあるように作られてるみたいで」
「…あたしも切れる、かな?」
強張った表情でむつはナイフを握り締めて、刃先を指に当てた。そして、力を入れようとした所で、京井がその手からナイフを取り上げた。
「切れると思いますよ。手枷も有効だったのなら、能力のある人間なら切れるでしょうね…持っていきますか?」
「…なら、手枷もじゃない?」
「使えるとは思いますが…重たいですし、邪魔になりそうですよ」
「投げたら一撃だよ」
「当たればの話ですよね?」
「遥和さんが投げたらまじの凶器」
むつは京井の手からナイフを取ると、棚に戻した。
「遥和さんは触っただけでもダメなんだね?」
京井の赤くなった手を見て、むつは眉間に深いシワを寄せた。そして、ナイフを見てちっと舌打ちを鳴らした。




