8話
むつは背中を壁にくっつけて、手のひらの炎を持ち上げつつ、前を指差した。
「あそこを出ると、地下の牢屋のもう1つ下に出るみたいなの。そこで、妖を殺めて汚れを流してるって…」
「…それで、そこからは?」
「牢屋に行って、捕まってるみんなを解放して…残ってるはずの覆面の者を捕まえられたら捕まえるけど…出来るとは思えない。とりあえず、組織の事は後にして、あたしは狐さんを逃がしてあげたい」
「狐さん?捕まってる妖とは別ですか?」
「うん。あたしの世話係としてつけられてた子…監視も兼ねてたと思うけど」
「…分かりました。上の片車輪たちはどうしますか?」
「あたしらが中に入れてから、口上通り、テロリスト逮捕に勤めて貰いましょ」
京井が頷くと、むつは手のひらの炎を吹き消し足音を殺して、真っ暗な中を手探りで進んでいく。水が少しずつでも流れているというのに、むつの足音はほぼ完全に消えている。その慎重さと気配を消す事の上手さに、京井は舌をまいていた。
真っ直ぐに進み、むつは手のひらを上にして少し腰を上げた。ぺたぺたと冷たいコンクリートの壁を触っていく。
「ここから、上がれる」
梯子のように、なっている部分に触れながらむつが言うと、京井もそろそろと移動した。
「私から行きます」
「うん…落ちないでね」




