8話
「むぅちゃん。人の社会に居るのが嫌になったら、私の所に来たらいいんですよ?それに海神も居ますからね」
「うーん…りぃといい遥和さんといい…恥ずかしげもなく、そういう事言っちゃうよね?まぁまぁな…臭い台詞ってやつだと思うよ?嬉しい半分恥ずかしい半分だよ…っと、あれか」
ぶつぶつと言いながら、器用に歩いていくむつは、右手に見えてきた分かれ道に入っていく。京井もどうにか曲がると、ずるずると歩いていく。
「それと…あの男とむぅちゃんは、どういう関係なんですか?」
「りぃ?仮面の?どう…って一緒に住んでたよ。だいぶんと昔の話になるけどね」
「本当だったんですね。彼から、一緒に住んでたっていうのは聞いてましたが…」
「うん。でも、そーゆー関係にはならなかったなぁ…」
「残念そうですね」
「残念かな?そうかも…でも、違うんだよね。ってか、あたし…あいつの言った通り寂しがり屋でして…側に居てくれる人ってみんな好き。そこに、性欲とかが含まれる事ってあんまりないかな」
「西原さんには性的な魅力があると?」
「…その話はまた今度ね。こんな話…遥和さんにしかした事ないわよ」
笑いを含んだ声だったが、振り向いたむつは真顔だった。唇に人指し指を当てるような仕草をして、静かにと言っている。




