8話
「体勢を整えてる逃げられるかもしれない…少し、どういう組織なのか知りたい。だから、意思が戻ってないふりをして向こうに行こうかと思ってたの」
「自分の身を危険にさらしてまで知る必要のあることなんですか?」
むつは前を向くと、なるべく水の流れた後のない部分に足をつけて、ちょこちょこと歩き出した。
「さぁ?分からない…遥和さんは妖だから分かると思うけど…何かさ、同類と居る方が何か安心ってか、ほっとしない?」
京井は膝を汚水に濡らしながら、むつの後に続いて進み始めた。滑るうえに臭く、気分が悪くなってきていた。
「居場所が欲しいなーって思う事はよくあるの。同じ力があるって事は悩みも供用出来ると思わない?」
「むぅちゃんは…向こうに自分が居れるかもかもしれないと思ってますか?」
「思ってた。今は思わないよ。だって…監視が4人も居るんじゃ帰らなきゃいけないよね」
「嫌でしたか?」
「ううん。嬉しいよ…やっぱり、あたしが戻らないと思ったから来たんだ?」
「あ…はい。宮前さんは特に」
「信用されてないよねぇ」
「そうじゃないと思いますよ?また、むぅちゃんの意思に関わらず戻ってこれなくなったらっていうのが1番の心配なんですよ。むぅちゃんが向こうに行きたいなら…行ったらいいと思います。そうなると、私と…」
「そのうち、戦う?やぁーだー怖いって。友達とは仲良くしたいもん。あたしこれでも平和主義」
「平和主義の人が、仕返しするっ‼て乗り込もうとはしないと思いますけど」
京井にやれやれと言いたげに、溜め息をついている。むつは、ちらっと振り返るとくすくすと笑っていた。




