8話
四つん這いになって入って行ったむつの後に京井が続いて入って行った。土管の中からは、ひぃとむつの悲鳴が聞こえていた。
「…ぬるってしたぁ」
「気を付けてくださいよ。それにしても酷い臭いですね。キツい」
「うん…息するの辛い」
むつは地上を行きたかったと言いながら、藻や得体の知れないどろどろとした物で滑らないようにと、爪をたてるようにして慎重に進んでいく。
「っ、見ないや…」
膝をついて身を起こそうとして、ごんっと天井に頭をぶつけたむつは、痛そうにしているが、それでも手で頭を触りはしない。むつはしゃがんだ姿勢になり、手のひらの上に炎をともして見せた。風が吹いているわけでもないのに、手のひらの炎は不安定に揺らめき大きくなったり、小さくなったりしている。
「…むぅちゃん?」
「不安定みたい。久しぶりだからかな?」
「あまり使わない方がよくありませんか?私が先を行きますから」
「無理でしょ。どうやって前後の入れ替えをするつもりなのさぁ」
振り返ったむつは歯を見せて笑ったが、その顔色はオレンジ色の炎に照らされているというのに、顔色が悪かった。
「大丈夫だから。信じてよ」
「…今夜じゃなくてもよかったんじゃありませんか?何で今夜なんですか?」




