8話
むつは土管に入ろうと手をかけたが入ろうとはず、何か考えるように悩んでいた。
「…1本道だから。みんなで行くのは得策じゃないと思う。気付かれて、何かあった時に共倒れする」
指先で下唇を撫でながら、むつはふぅむと何か考えている風だ。土管に足をあけて、土手をのぼっていき辺りを見回している。
「片車輪、しろーちゃんと先輩と地上を行ける?人形渡しておくから、それで連絡取りながら…けど、進む速度が違うからズレが生じるな」
癖なのか下唇を撫でながら、むつはぶつぶつと呟いている。そんな様子を見ながら、冬四郎はいつものむつに戻ってる事に安心していた。
「京井さんを…いや、一緒に居て欲しいな。うん、片車輪。しろーちゃんと西原と地上から行って。人形渡しとく…それがなくても、片車輪ならあたしと遥和さんを見失ったりしないよね?」
「大丈夫やで」
片車輪が頼もしくも、自信を持って頷くとむつは笑みを浮かべた。
「良かった。じゃあ…お願いね。あたしは遥和さんと下から行くから。着いたらしばらくは動かないで、様子見てから連絡するから」
「分かった。京井さんおるから大丈夫やろうけど…気ぃつけて行きや。ねぇちゃんの彼氏とにぃちゃんは、わしに任しとき」
「…うん」
何か言い返したそうな顔をしたむつだったが、すぐに表情を引き締めると人形を片車輪に渡して袖をまくって嫌そうな顔をしながら土管の中に入って行った。




