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8話
さらさらとした川の音に混じって、ちょろちょろと水の音が聞こえてくる。近くまで来ているんだと思い、むつは身をかがめて先を急いだ。早くしなければ身体が冷えて、動きにくくもなるうえに、山上との約束を守れなくもなる。
はぁと吐いた息は白い。見上げた空は曇っているのか、星も見えない。びゅっと風が吹くとむつは立ち止まって、肩をすくめて身体を震わせた。絶対に風邪をひくという自信があった。冷え症のむつの手足はもう冷たくなりすぎて、指先が痛くなっていた。
だが、ここで戻ろうという気にはなれなかった。ちょろちょろと聞こえてくる水の音をたよりに、すすんでいくと土管のような物が見えてきた。あれか、とむつは思うと草の中から出た。公園にあれば、子供が中に入ったりして遊べるのかもしれないが、大人のむつが入っていくには少し勇気がいる。それに針金で蓋がされており、その隙間から排水されている。
「…お尻がつまったらどうしよ」
むつはぺたぺたと体を上から触っていく。胸と尻は、腹よりも出ている。もしも、つまったらという不安がよぎる。




