492/542
8話
「…話したのか?」
「ちょっとだけ…帰ってきなさいって」
さくさくと足早に歩きながら、むつはふふっと笑った。余程の距離を歩いてきたのか、息が弾んでいる。
「帰るのか?」
「ん…たぶん」
男はつけていた仮面を外して、ポケットにしまうと、そうかと呟いただけだった。むつは男の顔を見て、懐かしそうに笑みを浮かべていた。だが、その顔色は良いとは言えない。
「大丈夫か?」
「うん…やり返すくらいの力は残ってるわよ。地下に閉じ込めてある妖たちも出してあげたいし。りぃは途中まででいいから」
「りんからりぃに変わったのか」
「りぃのが可愛くない?日本人ぽくなくなったけど。てか、ハーフ?そんな顔立ちよね」
「…可愛さ求めてないぞ?それにハーフじゃない。両親ともに日本人だ。東北出身だしな」
「それ、初耳」
はぁはぁと息を弾ませつつ、むつはまじまじと男の顔を見た。むつに可愛いからという理由で、りぃと呼ばれようと男はあまり気にしていない様子だった。
「そうかもな」
「一緒に住んでたのに、ね…と。ここまででいいよ。あとは1人で何とかする…」




