8話
冬四郎と京井が辺りを見て回って戻ると、山上が2人を待っていかのように、リビングに居た。側には、西原、篠田、こさめ、片車輪も居た。
「…居ないだろ?むつは紙っぺら置いて行ったぞ」
「紙っぺら?」
「あぁ。なぁ、むつ」
山上が自分の肩を見るようにして声をかけると、人の形に切り取った紙が意思を持っているように、肩に手をかけてよじ登ってきた。
『うん…ごめんなさい。けど、これってさ…あたしの問題だから』
「それと黙っていなくなるのとは別だろ?今はどこに居るんだ?」
『別だね。今は、彼と一緒。場所は…言えない』
「なら、何の為に黙って居なくなったんだ?こんな紙っぺら置いてくなら、直接言えばいいだろうが‼」
「みや、落ち着け」
「落ち着けるわけないじゃないですか‼むつ!!お前、何を考えてるんだ‼どんだけ、みんなが心配してたか分かってるのか‼」
『もう心配してくれなくていい』
「お前っ」
つんとしたむつの声に、冬四郎がくってかかろうとすると、山上が手で口を押さえて黙らせた。
「むつ、帰ってこないつもりか?」
『それも考えの1つ』
「そっち側に行くのか?」
『それはない』
むつはきっぱりと答えた。




