8話
「…むつ、俺と来い」
むつはふいっと顔を上げた。
「そこにいて、お前全部を話す気にはなれてないだろ?説明するにしても、何があったのかにしても。それを続けていれば、信用されなくなるだけだぞ?俺なら、全部は聞かない。お前と同じだからな…何に悩んでるのかも分かる。俺と居た方が楽じゃないのか?」
「…かもしれないね。行ったら、呪も消える?」
くっと男の笑う声がした。むつは困ったような笑みを浮かべて、マグカップを見つめている。
「自分で消したくせに何を言ってるんだ?カス程度の残りを恐れるなんて、お前らしくもないな」
「…かなぁ?自分の意思とは関係なく、誰かに手を上げたりしそうでさ…」
むつは、はぁと深い溜め息をついた。
「ずっと…見てた。自分の意思じゃなく、病院で暴れたの。ペットボトル吹き飛ばした時、本当にやばいって、止められないって思った。しろーちゃんに怪我させたし…呪があるとかないとか関係なく、そんな事になったら…どうしよって思う。怖い。覚えてないより、覚えていたくない」
「…それが狙いだからな。お前を孤立させて、居場所を失わせて…そうすれば、お前ならこっちに堕ちると思ってるんだからな。むつ、お前は…寂しがり屋なの、直ってないな」
「うっさい。急に居なくなったくせに」
「…手紙、置いて行っただろ?年に1回は会ってるし」
「ばかっ‼」
「…俺が悪いのか?」
「他に誰が居るのさ。何が1回は会ってるだよ…すれ違って、あたしが気付かなかったら無視のくせに」




