8話
「お前、いつから記憶が戻ってたんだ?」
「完全に戻ったのは、日本刀を返して貰ってから。だから、先輩と寝たのも遥和さんとご飯の支度したのも、自分の意思」
「…何で黙ってた?」
「悩んだから。どっちにしても、あいつら日本刀を奪いに来るから…本当は黙って気付かれないうちに向こうに行こうかな…って」
むつはそう言って、少し首を傾げた。しゅんしゅんと、やかんが湯気をあげている。京井は火を止めると、コーヒーを入れるとお盆に乗せ持ってきた。
「…むぅちゃん。全部、きちんとお話ししてくださいよ?そうじゃなきゃ、私も納得出来ないかもしれませんし」
コーヒーを貰ったむつは頷いた。
「分かる範囲で話す。あたしも覚えてない事も多いから…」
ふぅふぅとコーヒーを冷ましながら、一口飲んだむつはマグカップをテーブルに戻した。
「あのね…日本刀の隠してある所を言っちゃったみたいなの。でも、あいつらが探しに行っても無かったって言われて、だから誰か…何で先に見付けたの?」
むつが首を傾げると、冬四郎はむつの手を掴んで小指についてる鈴を振ってみせた。
「あ…あぁ…そう。やっぱり…これ、そうだったんだ。彼は?一緒、なわけないよね」
少し残念そうにむつは言うと、控えめに鳴る鈴を見ていた。




