8話
むつが話している途中で、どんっとこさめが抱き付いてきて、むつは地面に倒れた。
「…むつっ‼むーつーっ‼」
「んーっ‼こさめぇ‼久し振り‼」
ぎゅうっとむつはこさめを抱き締めている。
「久し振り、じゃないわよ‼あんたねぇ‼」
「ごめんって、刀を抜いたのは本当に悪かったってば。上から片車輪を落としたのも…大丈夫だった?片車輪も、ごめんね」
くすくすとむつは謝る気もなさそうに、笑いながら言っている。冬四郎、西原、篠田の3人は何がなんだか分からない様子で、むつとこさめを見ている。寒い中、嫌がる事もなくむつは地面に倒れたままで、こさめを抱き締めていた。
「…バカが。風邪ひくぞ?」
がさがさと音をたてて、京井と山上がやってきて、呆れたようにむつとこさめを見ている。
「バカは風邪ひかないもーん」
むつは言い返しながら、こさめの背中に回していた手を山上の方に差し出した。山上はその手を取ると、引っ張り上げてむつとこさめを一緒に起こした。京井はむつの背中についた土を、ぱたぱたとはたいて落としている。
「ありがと…ちょっと計画とは違うけど…まぁ助かりました。本当にありがとうございます」
むつは山上に深々と頭を下げた。
「まぁ無事で何よりだ。とりあえず…風通しの良さそうな我が家でよけりゃ入れよ」
「そーするよ。靴のまんまでも良い?」
「むしろその方が良い」
むつと山上は、けらけらと笑いながら家に入っていった。




