7話
ずんっと1歩を踏み出すと、男たちはまた1歩下がった。男たちが、京井を恐れている様子は明らかだった。京井が姿勢を低くし、今にも飛びかかろうとしていると、リビングに面している庭の方からどさどさっと複数の男が、投げ飛ばされてきた。煌々とオレンジ色の炎をまとった片車輪がやってきて、高い位置から腕を組みじろっと男たちを睨んでいる。
「…っ、一旦引け‼」
偉そうに物を言っていた男の声がどこからともなく聞こえると、複数の男たちは京井と片車輪に背は見せずにするすると下がり、暗闇に溶けるようにして見えなくなった。かさかさかさとそよ風のような音が、遠退いていくのを京井はしっかりと確認していた。
完全に覆面の男たちの足音が聞こえなくなるまで、京井も片車輪もその場からは動かなかった。だが、やがて音もしなくなると、片車輪ははぁと息をついて表情を緩めた。からからと車輪を回して、冬四郎の側により抱き上げている、むつを見ている。
「穴だらけやな…可哀想に」
むつを静かに地面に置いた冬四郎は、つかつかと京井に近寄るとふさふさとした長い毛を掴んだ。
「どういうつもりだ!!殺すことないだろうが‼」
びりびりと空気を震わせる程の大声にも、京井はぴくりとも反応しない。そのかわり、静かに顔を下げて項垂れた様子を見せた。




