7話
壁に当たったからなのか、煙を吸い込んだからなのか、むつは床に膝をついて胸を押さえるようにして、ごほごほと咳き込んでいる。だが、すぐに立ち上がると京井を追うようにして外に出ていった。街灯もなく、外に出た途端に視界がより一層悪くなった。
むつの目に入っているのは京井だけなのか、窓枠を壊して無理矢理にも外に出てきた片車輪には目もくれない。
がさがさと草木を踏んで動く音が、暗闇の中から聞こえるだけで、むつと京井がどうなっているのかは全く分からない。こさめには見えているのか、時折素早く視線を動かしていた。だが、今はむつと京井の事よりも自分たちの事だ。
外に出ていった片車輪は本来の姿をしており、なかなか覆面の男たちも近付けないでいるようだった。そのせいなのか、女の子の姿をしているこさめに狙いを定めている様子だった。だが、こさめは臆する事もなく、きっと男たちを睨み返している。
人数はそこまで多くはないが、何度も襲撃にあっている分、相手がどのくらい強いかは分かっている冬四郎は、どうにかして逃げ出す算段を考えていた。どんなに相手が強かろうとも、相手も人には変わりない。そうだとすれば、夜の山の中であれば逃げ切れる可能性もある。




