7話
「…宮前さん、大丈夫ですか?」
「あぁ…」
冬四郎は取り押さえられているむつを見て、溜め息をついた。むつは、自分の上にいる西原をじっと見ている。表情の見えない、無機質な目に西原はぞっとした。
むつが動かずに大人しくいる事に、冬四郎も西原もほっとしたような表情を浮かべたが、京井と片車輪は逆だった。むつを押さえ付けたとしても、周囲には覆面の男たちの気配を痛いくらいに感じられる。いつ、一斉に入ってきてむつの加勢に加わるか分からない。
「ど、どうしますか?あの、むつを押さえてるのってすっげぇ怖いんすけど」
西原の気持ちが分かるのか、冬四郎は代わるとは言わなかった。京井がその気持ちを汲み取ったのか、西原と交替した。
「…むぅちゃんを押さえた方が危ない気がしますが、このままにしておきますか?」
「手放せや」
「むぅちゃん相手に本気になれませんよ。何かで縛り上げて大人しくしといて貰った方が」
「…手足折ったらえぇやろ」
「ふ、ふざけんな‼」
西原が片車輪に掴みかかりそうな勢いで、言い返すと同時にむつも抗議するかのように、京井が掴んでいた手からぼごっと溢れ出すようにして炎が出現した。




