7話
冬四郎がぐっと腰を落として、むつの様子を見ている事に気付いたのは、西原だけではなく、篠田とこさめもだった。京井をおとりに、取り押さえるつもりの冬四郎はむつが背中を向けるのを待っている。
こつっとむつの足音がして、完全に背中を見せた。むつの視線が完全に京井の方に向いている事を確認すると、冬四郎はむつに駆け寄った。
はっとしたようにむつが振り向いた。だが、咄嗟の事で反応が遅れたのか、冬四郎に羽交い締めにされた。だからといって、慌てて暴れるでもなくむつは軽く持ち上げたで冬四郎の足だんっと踏んだ。だが、予期していたのか冬四郎は足を引いており、爪先を少し踏まれただけで痛みはない。それでも羽交い締めにしていた手が少し緩んだ。しゃがむようにして、無理矢理腕から逃れたむつは冬四郎の膝裏に腕を回して引っ張った。かくんっと冬四郎がバランスを崩すと、立ち上がったむつは体当たりを食らわせて一緒に倒れた。強かに背中を打った冬四郎は呻いた。そんな冬四郎の上に一緒に倒れたむつはころんっと上を転がるようにして、いつの間にか背後を取っていた。だが、その後ろに西原が詰めており、むつの腕を後ろに回させると頭を押して床に叩き付けた。
「くっ…」
だんっと床に顔を押し付けられたむつは、微かに呻いた。体重をかけるようにして押さえ付けていた西原は、申し訳なさそうな顔をしたものの、力を緩める事はしなかった。




