7話
夜も更けてきて、おのおのが部屋に入っていっても京井はリビングに1人残っていた。山上が帰りが遅くなると言うから、待つつもりでパソコンが画面とにらめっこをしている。かたかたとキーボードを打ちながら、コーヒーを飲み首を傾げたりしている。今夜家に居るのは、むつ、冬四郎、西原、篠田とこさめ、片車輪だった。むつは朝、以来部屋に引きこもったまま過ごしている。京井は、そのむつの様子も気掛かりだった。
パソコンを使う事が増えてから購入した、ブルーライトカットの眼鏡を外し京井は目頭を揉んだ。その仕草をする事は、やけに人間臭いなと京井は1人、苦笑いを浮かべるとコーヒーのおかわりをいれにキッチンに立った。
「…雨、か」
キッチンの小窓にぱたぱたと水が、かかってきていた。少し雨が降ってきたようだ。人としての生活が長くなってきたせいか、寒さ暑さにだいぶ弱くなってきた気がしていた。ぶるっと身体が震えて、腕には鳥肌が立っている。
京井は腕をさすりながら、コーヒーを持ってリビングに戻った。暖房がきいていて、暖かいが鳥肌はおさまらない。すっと目を細めた京井は、湯気のたつコーヒーを一口飲んだ。嫌な気配があちらこちらから漂ってきている。全く気付かなかったのは、雨が気配を消していたせいもあるだろうが、ここであれば安心だと思っていた気の緩みもあっただろう。ちっと舌打ちを鳴らすと、マグカップをテーブルに置いてパソコンを閉じた。




