7話
シャワーを浴びて、さっぱりとしたのかむつは京井に言われた通り、きちんと髪の毛を乾かしてからベッドに潜り込んだ。朝から動いていたせいか、疲れたようでむつはすぐに眠りについた。1度、様子を見に来た京井はそれを見てほっとしていた。これなら、冬四郎にも怒られずに済みそうだった。
むつも元気になってきているし、何事もない日が続いているからか、誰もが安心したように過ごしている。だが、京井はパソコンを開いてキーボードを叩きながらも、耳に神経を集中させている。何かあった時に、動けるのは自分と片車輪けらいだと思っているからだ。片車輪もそう感じているのか、時折ふらっと出ていっては家の周辺を見て回っているようだった。よろず屋の事務所や、むつの自宅マンションでガタいがよく強面の男が、うろうろしていれば明らかに不審者だが、ここであれば人目につく事もない。それを分かってか、散歩に行くと言っては本来の姿に戻ったりもしていた。京井もそうしたかったが、あまりむつから離れるわけにもいかない。
ここに来た1日目に窓から脱走した事
冬四郎と西原の前で誰かに呼ばれていると言っていた事を聞き、京井はそれが気になって仕方なかった。
昼に食事の用意をした京井が、むつを起こしに行くと、ぼんやりとした様子でベッドに起き上がっていた。だが、食事はいらないと言い、薬だけを飲んでまた横になっていた。朝の元気の良さとはうってかわって、元気がない。やはり、風呂に入れるべきではなかったのかもと京井は感じていた。




