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7話
冬四郎と西原が出ていくと、山上も事務所に行ってくると言って立ち上がった。
「京井さんは?」
「あ、私は今日は大丈夫ですので。むぅちゃんのお世話係として残りますよ」
「頼む。篠田も片車輪も居るし…大丈夫だな。何かあったらすぐに連絡くれ」
タバコをくわえたまま、山上は上着を手に持つと、むつとこさめに見送られてふらっと出て行った。人が少なくなった家の中は、静かになった。
むつは落ち着きなさげに、辺りをきょろっと見回した。篠田とこさめはソファーでくつろいでいるし、片車輪は散歩に出掛けている。
「どうしました?」
「…お風呂に」
京井は呆れたような顔をしたが、ダメとは言わなかった。
「すぐに髪の毛乾かして、ベッドで大人しく過ごしてくれますね?」
こくこくとむつが頷くと、京井はバスタオルを用意してむつに渡した。むつはバスタオルを抱えるように持って、風呂場に向かっていった。
「…また熱上がったら、しろーに怒られるやーつー」
こさめが言うと、京井は人差し指を口にあてて、内緒にしておくようにと言った。




