2話
「データ持ってきたんだよ」
むくれたように唇を尖らせながら晃が言うと、冬四郎は明らかに嫌そうな顔をしていた。
「それは、どうも…山上さんのパソコンに送ったら済む話でしたのに」
「お前なぁ、むつが居なくなったんだぞ。机の上でくそつまんねぇ書類に判子押してる場合じゃねぇだろうが」
「そりゃそうかもしれませんけど…署長がほいほい出歩いて良いんですか?示しがつかないじゃないですか」
「示し?妹と仕事なら、妹だろうが」
兄弟の中で1番の妹大好きの晃には、これ以上何も言うまいと思ったのか、冬四郎は両手を上げて降参ポーズをして見せた。
そんな兄弟のやり取りを面白そうに、他の面々が見守っていた。どちらも、妹大好きに変わりないと誰かがぼそっと呟いたが、冬四郎にも晃にも誰の声なのか分からなかったようだ。
「それで…何か映ってましたか?不審者とか」
「あぁ、一通り目を通した。見逃しもあったかもしれないけどな」
山上はパソコンの画面が冬四郎に見えるように、少し向きを変えた。早送りで、防犯カメラの映像が流れていく。先に見ていた山上は、タイミングを見計らうようにして、一時停止ボタンを押した。そして、再生させた。




