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7話
「…むぅちゃん。起きてらしたんですね」
むつはこくりと頷くと、京井に促されるようにしてリビングに入った。京井はむつの為に、沸かしておいた湯でハチミツを溶かして輪切りにしたレモンを浮かべた。
「どうしました?こんな時間に…何か私にお話があるような事を、篠田さんと山上さんからうかがいましたが」
マグカップを受け取ったむつは、ふぅふぅとしながら一口飲んだ。
「今日は食事をしてないそうですね。お腹、空いてるようでしたら、何か作りますよ」
京井がそう言うと、むつはゆるく首を振った。そして、もう一口飲むと静かにマグカップを置いた。
「むぅちゃん…?」
無表情でひんやりとした表情のむつだったが、どこか違う。京井はそう思うと、緊張した。何が違うかは分からないが、まとっている雰囲気がずいぶんと違うようだった。むつは少し京井の方に寄ると、膝の上に手を置いてすっと背筋を伸ばした。そして、ゆっくりと口を開けた。




