446/542
7話
「っ…と…むつ?」
名前を呼ばれたむつは、不思議そうな顔をして西原を見ていた。顎に指を添えて上を向かせたものの、そこから先の勇気が出なかった西原は溜め息をついた。西原はむつの頬に、唇を押し付けるだけにしておいた。ほんのりと、むつの頬が赤くなったが真っ暗なせいか西原は気付かなかった。
むつは少し微笑むと、西原の胸元に顔を埋めるようにして潜り込んだ。そんなむつに気付かない西原は、むつの背中に手を回すと、とんとんっと優しく叩いた。
「寝ろよ?じゃないと熱下がらないからな」
「…朝まで、居てくれますか?」
もごもごと言うと、西原はむつの頭に顎を乗せて頷いた。むつには見えなかったが、西原は嬉しそうな顔をしていた。返事が貰えて安心したのか、むつは目を閉じた。
薬を飲んでいるからなのか、むつはあっという間に眠りについた。くぅくぅと寝息が聞こえてくると、西原もそのまま眠りについた。




