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7話
「むつ…さっき、どうしたんだ?呼んでるって言ってたな?誰が?誰に呼ばれてたんだ?」
怖がるような様子を思い出したのか、西原が聞いてみてもむつは何も言わなかった。少し首を傾げただけだった。分からないなのか、答えたくないなのか、判断の出来ない様子だった。
「まぁ、いっか。言いたくなったら言えな?」
こくっとむつは頷いた。西原まだ他にも聞きたい事はあったが、今は聞かなくてもいいかという気になっていた。そのうち、本当に言いたくなったら言うだろうと思っていた。
布団の中が暖かくなってきたからか、むつは口に手をあてて、ふぁふぁと欠伸をしていた。大きく口を開けすぎたのか、涎が垂れたのかちろっと舌を出して唇を舐めていた。西原はそれを見て、何を思ったのか下唇を親指でなぞるように触った。むつはその西原の指をぺろっと舐めた。熱く、柔らかい舌に舐められ、西原はむつの顎に指を添えて上を向かせた。
むつは嫌がる素振りも見せずに、目を閉じた。そうされると西原は、ゆっくりと顔を近付けた。だが、あと少しで唇が触れそうな所で顔を止めた。




