7話
薬を飲んでから夕飯と言って、むつの前に卵を落とした粥が置かれたが、食べる気がないようで、スプーンを持とうともしない。ダイニングテーブルについてはいるが、他の人が食事をするのをつまらなさそうに見ているだけだった。1度だけ片車輪が、スプーンに少しだけ粥を乗せて冷ましてから、むつの口元に持っていったが、むつは片車輪の手をやんわりと遠退けた。片車輪は何か言いたげに、冬四郎を見たが冬四郎は、軽く首を横に振っただけだった。
食事を終え、冬四郎と西原、山上が片付けをしている間に、篠田は廊下に出て行った。むつは片車輪とこさめに挟まれるようにして座り、大人しく白湯を飲んでいる。
「むつさん」
戻ってきた篠田はむつの前で膝をついて、視線を合わせると心配そうに顔を覗きこんだ。
「京井さん少し遅くなるそうです。ですが、戻ってくるそうですから…それまでは部屋で休んでいてはどうですか?」
むつは少し考えるように首を傾げた。そして、ちらっとキッチンに視線を向けた。篠田は目を少し細め、キッチンに向かっていった。水の流れる音と食器のかちゃかちゃと当たる音がしてい。
「…お風呂入ったら怒られる、と思いますか?」
ソファーに寄り掛かり、少しだけこさめの方に寄ったむつが囁くように言った。こさめは驚いたような顔をしたが、少しだけ悩んでから顔を近付けて、こつんとむつの額に自分の額をくっつけた。
「殺されるレベルね。今日は我慢しなさい」
こさめがきっぱりと言うと、にゅっと分厚い手を伸ばした片車輪もむつの額に手を当てて頷いた。




