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7話
「…西原、パソコン開けろ」
冬四郎に言われた西原は、パソコンを開けると先程見ていた物を冬四郎に見えるように、少し斜めにした。西原のそばに寄った冬四郎は、画面を見つめていた。
「むつ、こいつを知ってるのか?」
「…あの時の、きつね」
「お前、これが狐に見えるのか?」
西原のパソコンの画面には、むつの自宅マンションを見張るように立っている男が映っているが、冬四郎にも西原にもそれが狐には見えない。ただの人のようにしか見えないが、むつはいったい何を見ているのだろうか。
「…ここ」
むつは画面に映りこんでいる、カーブミラーを指差した。冬四郎はそこに顔を寄せて、じっと見ている。そして、むつを見た。
「お前…いや、いい。西原、この角度だとミラーに人影が入ってて普通だよな?」
「えぇ。でも映ってませんね。かろうじて、影が見えてますが人じゃないですね」
「あぁ…」
画面に見入っていたむつは、ついと顔を上げた。何かあるのか、室内をきょろきょろと見ている。そして、不安げに顔を曇らせるとぎゅっと胸元を押さえるようにしている。




