7話
夕方になり、こさめが2階から下りてきた。眠たそうに目を擦っているという事は、むつと一緒に寝ていたのかもしれない。
「こさめ、寝てたね?むつさんと」
「うん…寝てたぁ。むつも起きたよ。けど、熱上がってるっぽいから体温計貸して」
こさめが手を出すと救急箱から体温計を出した山上が、その手に乗せてやりながら、ちょっと待てと言った。こさめを待たせている間に、山上はチョコレートを刻んで煮立たせた生クリームを加えて溶かした。そこに少しのシナモンとインスタントコーヒーを加えた。それをお盆に乗せると、こさめに持っていくように言った。
「………」
「何だよ?京井さんが教えてくれたんだよ。むつは、こーゆーの好きだからって」
冬四郎の視線に気付いた山上が、照れたように言うと、がちゃがちゃと片付けを始めた。
「むつとこさめさんにだけですか?」
「はぁ?何で、男に作ってやるんだよ。女の子になら作ってやりたいけどな。それにお前、甘い物はそんなに好きじゃないだろ?」
「まぁそうですけどね。 見てると一口欲しくはなるんですよねぇ」
冬四郎はそんな事を言いながら、山上の手元を見ていた。




