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7話
冬四郎は、真っ直ぐ寝室にむつを連れて行った。むつは目を覚ます事なく、ぐったりと冬四郎に身体を預けている。どれくらい外に居たのか、身体はすっかり冷えきっている。一緒に入ってきた片車輪が、日本刀をベッドの脇に立て掛けた。
「毛布、貰って来るわ」
片車輪が出ていくと、冬四郎はベッドに腰掛けむつの顔を見ていた。寒さで鼻の頭は赤くなっているが、頬や唇には色がなくなっていた。
「………」
毛布を持ってきた片車輪は、何か言いたそうに口を開けたが、何も言わずにむつの身体に毛布をかけてから布団をかけ直した。
「なぁ…どう思った?むつの様子」
出て行こうとした片車輪は、立ち止まると冬四郎の方を向いた。片車輪は、腕を組むと唸った。
「…どうやろうな。やけに、人らしくはなかった気ぃしたけど…」
「そうか…」
絞り出すように、返事をした冬四郎は立ち上がると片車輪と一緒に部屋から出た。




