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1話
「そうですね…けど、かなり危険ですよ」
冬四郎が心配そうに言うと、京井はにっこりと微笑んだ。片車輪もにやっと笑ってみせていた。
「私はそんなに弱くはないですよ。心配でしたら、夕雨を呼んで協力して貰うのもありですし」
「心強いですが…恐ろしいですね」
「臭いが途切れてるなら、諦めたふりをして戻ろうや。近付きすぎて、ねぇちゃんが他の場所に移されたら面倒や」
「あ、そうですね」
「心配なんは分かるけどな。あのねぇちゃんがちょっとやそっとで死ぬかいや」
ばしばしと片車輪に肩を叩かれた冬四郎は、思いの外強い力によろめいた。だが、2人が居てくれるからか何とかなるような気がしていた。
「そうですね…戻ってデータ見てみましょう。それに、事務所に居れば個々に襲われる事もないでしょうから」
冬四郎にそう言われ、京井と片車輪は頷いた。そして、何も気付いていないふりをしながら、来た道を戻り始めた。戻りながら、冬四郎は然り気無く辺りに目を向けてみたが、こちらの様子を伺っているような人物を見付ける事は出来なかった。




