7話
冬四郎はトランクを開けようと、鍵を出したが手が震えていた。それを気付かれないように隠しつつ、開けると中から日本刀を取り出してむつの方を向いた。渡したらどうなるのかと、不安に思っていた。むつは手を差し伸ばす事もせずに、じっと待っている。
意を決して、日本刀をむつに差し出すとむつはややあってから、両手でしっかりと受け取った。持って感触を確かめるように撫でたりしていたが、急に力が抜けたかのようにぐらっと身体が傾いた。
咄嗟に腕を伸ばして、冬四郎はむつが地面に倒れる前に抱き上げる事が出来た。
「どない、なってんや?」
地面に落ちた日本刀を広いあげた片車輪は、日本刀とむつを交互に見た。冬四郎にも、どうなっているのか分からず首を振った。
「ねぇちゃんは?」
「気を失ってるみたいだ…けど、何で車に乗せてあるの知ってたんだ?」
「それより、よく車なんかに置きっぱなしにしてられたな…怖ないんか?」
「残りは家の中の分かりやすい所に隠してるからな…手元より安全そうじゃないか?」
「そりゃそうかも分からんけど…意外と大胆な事をしはるよな。犬神さんと決めた事かいな?」
「あぁ…とりあえず戻るか」
冬四郎はむつの足を持ち上げるようにし抱き抱えると、片車輪に日本刀を持ってこさせると家に戻った。




