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7話
京井がむつの為にと用意してくれた朝食は、トマトベースのリゾットだった。細かく刻んだ野菜が入っており、見た目も香りも良かった。二口、三口とスプーンを動かしたが、むつはぴたっと手を止めた。
「…どうした?」
ダイニングテーブルでコーヒーを飲みながら、むつを見守っていた冬四郎が心配そうな顔をしていた。むつは、スプーンは放り投げるようにして、がたっと立ち上がるとばたばたとどこかへ行ってしまった。リビングに居た山上と篠田も心配そうに、むつの後ろ姿を見ていた。
「むつ、どうしたんだ?」
「分かりませんけど…」
しばらくして戻ってきたむつは、真っ青な顔をしていた。そして、リビングの床にへなへなと座り込んだ。山上が近寄り、むつの顔を覗きこんだ。
「むつ?」
「……い」
「え?」
「…気持ち、悪…い」
「まだ吐きそうか?大丈夫なら、横になれ」
山上に支えられ立ち上がったむつは、大人しくソファーに横になった。




