7話
尻尾を丸めるようにして、むつの背中に回して完全に、むつを包むようにしている京井はくぅくぅと寝息をたてるむつの顔を見ていた。むつが布団の中に入れてくれたから、京井も寒くはなかった。むつは京井の太い前足に顔を乗せて、手も足も、ぎゅっと縮めて丸くなっている。
「…ね、さ…」
もぞっと身動ぎし、むつは何か寝言を言った。顔を上げた京井は、ぴくんっと耳を動かしてむつの寝言を聞いていた。だが、何を言ったのか聞き取れずそれから寝言を言う事もなく、すぅすぅと寝息をたてて眠っている。京井は頭を下げて、目を閉じた。
すぐには眠れそうにないが、むつの穏やかな寝息を聞いているうちに、うとうとし始めていた。今夜は何事も無さそうな気がしていた。
いつの間にか眠っていた京井だったが、微かな鈴の音を聞いた気がして目を覚ました。むつの小指についている鈴が、微かに振動するように細かく小さく鳴っている。それに合わせるかのようにむつの呼吸も少し荒い。薄き開いた口からは、苦しげな声が漏れている。起こすべきかと悩んだが、様子を見ておく事にした。鈴の音も苦しげな声も、ほんの少しの間の事で、すぐに聞こえなくなった。だが、むつの額には汗が浮かんでいる。熱にうなされていたのか、それとも別の何かなのか京井には分からなかった。




