7話
部屋に入ったむつは京井をじっと見上げていた。その目が何を言っているのか分からない京井は、困ったように首を傾げた。
「…どうしました?」
首を振ったむつはベッドに向かっていき、布団に潜り込むと端に寄って布団をぽんぽんと叩いた。呼ばれていると分かった京井はベッドに腰かけたが、どうやらそうじゃないようだった。むつはついと袖を引っ張っている。
「…一緒に」
一緒に布団に入れと言いたいのだと分かると、京井は誰も居ないと分かっていても部屋の中を見渡した。冬四郎がからかう為に、仕込んだのではないかと疑ってみたのだ。
「…犬なのに…ふかふかしてないですよね」
寝転がった京井の胸元に顔を押し付けながらむつが言うと、京井はどういう事なのかすぐに分かった。少し悩んだ末に、京井は1度ベッドから出て服を脱ぐとともに本来の姿に戻った。そして、のしっとベッドに上がった。身体が大きいから、ベッドからはみ出て狭いが仕方ない。
「あ…」
長い毛が触れたのか、むつは嬉しそうな声を上げた。ふわふわとした毛は、風呂に入ったからシャンプーの香りがしている。むつは嬉しそうに、京井の首に腕を回すとすり寄った。ふわふわした毛と暖かさに包まれ、むつは足を曲げて丸くなると眠りについていった。




