7話
「あー面白い。さ、むつ…そろそろ遅いから寝なさい。誰か一緒じゃないと寝れそうにないか?」
ひとしきり笑った冬四郎は、まだ笑みを浮かべたまま、むつの頭を撫でていた。むつは何で冬四郎が笑い続けていて、西原が不機嫌そうなのか分からない様子だった。
「誰と一緒が良い?京井さんか?」
むつはキッチンにいる京井の方を見て、冬四郎を見上げた。この2人で迷っているようだったが、ちらっと西原の方も見た。その視線を見逃さなかった冬四郎は、むつの頭をそっと掴むとを京井の方を向かせた。
「京井さん…?」
無理矢理そうさせたせいか、むつは冬四郎の方を見上げていた。だが、そんなむつを見なかったふりをして、冬四郎はホットワインを飲み干して、むつのマグカップと一緒にキッチンに持っていくと、ざぶざぶと洗った。
「…むぅちゃんは西原さんを意識してるみたいですよね。好みって本当に変わらないって事なんでしょうか」
「かもしれませんね。今夜もむつを頼みます」
マグカップを洗った冬四郎はむつの手を引いて、京井と共に2階に上がっていった。1階は暖房もきいているし、人も居たからか暖かかったが、2階にあがるとひんやりとしていて寒い。
「むつ、俺はこっちの部屋に居るから、何かあったらすぐ来なさい。俺も何かあったら、すぐに行くからな」
「…はい…おやすみなさい」
「ん、おやすみ」
むつが京井と共に部屋に入ってから、冬四郎は隣の部屋に入っていった。風呂に入ってホットワインを貰ったにしても、部屋は寒くあっという間に冷えてしまいそうだった。




