7話
ホットワインを作って貰い、むつはそれを持って来ると、冬四郎と西原に渡した。そして、またキッチンに戻り自分の分を持って来ると冬四郎と西原の間に割り込むようにして座った。
こくこくとホットワインを飲みながら、むつは何を見ているのか視線をさ迷わせている。
「むつ、何を見てるんだ?」
気だるげに首を巡らしたむつは、西原の肩にこつんと頭を乗せた。
「…ふわふわしてるのが」
マグカップを持っているというのに、手を放して宙を指差した。溢れる前に受け取った西原は、その指先を見た。壁の方を指差してはいるが、西原には何も見えない。だが、むつには視えているのか、何かを追うようにして顔をゆっくりと動かしている。
「ふわふわしてるの?」
冬四郎もむつの指先を追うようにして見ているが、何も見えないようだった。
「…酔ったか?」
西原がこつんと、むつの額に自分の額をつけると、むつは瞬きを何度も繰り返した。そして、ゆっくりと赤面していった。
「ほら、顔赤い…あ、もしかして熱がまた上がってるんじゃないか?熱いぞ?」
ぺたっと西原に頬を触られると、耳まで真っ赤にしていた。だが、むつは嫌がる素振りも見せない。石のように固まっているのか、動きもしない。
「…って、お前?え…息止めてる?え?何で?あ、俺臭い?風呂入ったんだけど」
「西原君の鈍い所は好感持てんだよなぁ」
冬四郎がぼそっと呟いたが、西原には聞こえていなかった。




