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7話
「あぁっつ…はぁ…脱走した時に、好きって言われたんですよ。ふぅむ…宮前さんをお兄さんて呼ぶのは西原さんじゃなくて、私かもしれませんねぇ」
くすくすと笑いながら京井は、湯から上がると冬四郎の横に座った。両手ですくった湯で、ばしゃばしゃと顔を洗うとぶるぶると頭を振っていた。
「どっちが良いですか?」
お兄さんて呼ばれるなら、自分と西原どっちが良いかと聞かれても、冬四郎はどっちも嫌だなと思っていた。
「この山は…まぁ安全とは言いきれませんが、まだ町よりは安全ですよ。けど、むぅちゃん少しずつ元気になってますからね、動き回られると危険かもしれませんね」
「そうですね」
冬四郎と京井はぬるめのシャワーを頭からかけてると、揃って出た。冬四郎は頬の絆創膏を京井は腕と胸の包帯をすでに外していた。冬四郎の傷はそれほど目立たない物になっているが、京井の傷はまだ痛々しい物だった。
着替えを済ませ、バスタオルを頭に乗せたまま、リビングに戻ると祐斗と片車輪、こさめは部屋に引っ込んだのか居なかった。だが、むつが居た。




