1話
「京井さん、どのくらいまで臭いって辿れるもんなんですか?」
「そうですね…臭いが続いていれば、どこまででも行けるとは思います。ですが日にちが経ってますし、連れ去られたなら堂々と担いで行くとは思えませんから」
時折、立ち止まり京井は辺りを見回した。住宅街とは言えど、車も通れば人も通る。そうなれば、風で臭いが飛ばされてしまっている。それに、むつが何かに押し込められたり、車で連れ去られたのであれば、その臭いも本当に微かな物だろう。だが、京井はすんっと鼻を鳴らしてゆっくり進んでいく。
「おねぇちゃんの血の臭いが、ほんのりとだけどするな」
片車輪がそう言うと、京井は頷いた。きょろきょろと辺りを見ると、しゃがみこんだ。そして、本当に犬のように顔を近付けて臭いを嗅いだ。
「犬神の姿に戻った方が早いんやないか?」
「そうかもしれませんが…大きすぎて、人目に付きすぎると思いますよ?」
「それもそうやな。人の形も不便やな」
京井はくっと笑った。そして、立ち上がるとまたすたすたと歩き出した。冬四郎は2人の邪魔にならないように、少し後ろを歩きながら、辺りを見回した。そして、携帯を取り出すとまた晃にかけ始めた。
『今度は何だ‼』
「あ、悪い忙しいか?むつのマンションの回りにも防犯カメラあるんだけどさ…これって見れないか?」
『……いや、出来る。データは山上さんのパソコンで良いんだな?お前は今、何をしてるんだ?』
「あぁ。今はむつが世話んなってる人に協力を頼みに行こうかと思ってな。あと、鑑識の資料も見たいな。風呂場に血みたいなのもあったし」
『人使い荒いな』
「使える物は使えって言われたんで。じゃあ、頼みましたよ」




