7話
完全にむつが寝てしまうと、冬四郎はそっと抱き上げて部屋に連れて行った。以前よりも、確実に軽くなっているむつを心配しつつ、ベッドに寝かせ布団をしっかりとかけた。
「…おに…さ…」
布団の中から、小さな声がして冬四郎はベッドに腰かけた。リラックスしきれていないのか、むつはすぐに目が覚めてしまうようだ。
「どうした?」
「今日…呼ばれた…から、外に…きょ、いさん…悪くな……」
「そうか…分かったから。今夜は寝なさい」
「す、ず…」
分かって貰えたと思ったのか、途切れ途切れに言うと、むつはすぐに目を閉じて、くぅくぅと寝息をたてはじめた。外に出た事の理由を言ったようだったが、全てを聞き取る事は出来なかった。だが、呼ばれたとはどういう事なのだろうか。
一緒に外に出ていた京井にあとから聞けば、何か分かるかもしれないと思い冬四郎は、むつの頭を撫でるとそっと部屋から出た。
「呼ばれた…?」
ドアの前に立ったまま、冬四郎は首を傾げていた。むつの部屋を挟むようにして、冬四郎と京井が使っている。だが、冬四郎は、誰かがむつを呼ぶような声は聞いていない。
「…ちっ」
舌打ちをしただけで、冬四郎は1階に戻ろうとしたが、むつを1人にして大丈夫だろうか、という不安にかられ振り返った。やはり、誰かを常に側に置いておく必要性がありそうだった。