7話
ちびちびとブドウのジュースを飲み、冬四郎が食べるか?と聞いた物をほんの一口、口にするかしないかで、あとは会話に耳を傾けていたむつだったが、会話が子守唄になったのか、ふぁふぁと欠伸をするようになってきていた。
足を曲げて椅子に乗せて座り直した冬四郎は、むつを左手で抱くようにしながら、とん、とんっと足の付け根あたりを優しく叩いていた。こてんっとむつが寝ると、冬四郎は素早くむつの手からグラスを取りテーブルに置いた。
「手慣れてるよなぁ」
「変な言い方しないでくださいよ。それより、静かに…もぅ少しで完全に寝ちゃいますから」
くったりと冬四郎に身体を預けるようにし、むつはくぅくぅと寝息をたて始めていた。
「しっかし、よく寝るよな…」
「熱が下がらないから、仕方ないんじゃないですか?それに、疲れ重なってると思いますよ」
「気疲れだろうな」
山上と颯介は、むつの寝顔を心配そうに見ていたが、あどけない寝顔、ついつい山上の口元は緩んでいた。そのだらしない笑みを見て篠田が、くすくすと笑っていた。
「山上さんこそ、父親みたいですよ?」
「年齢で言ったらな。むつぐらいの子供が居てもおかしくはねぇもんなぁ。篠田はまだか?そっちの方は」
「まだまだ先です」
「だろうな…まだ花嫁修行必要だな」
山上はちらっと祐斗とぎゃあぎゃあとはしゃいでいるこさめを見て、ふふっと笑っていた。