7話
ぴぴっと体温計が鳴ると、取り出してむつは冬四郎にも見えるようにした。
「39度か…上がってるな。早めに寝るか?」
「…まだ」
「まだ眠くないか?」
むつが頷くと、冬四郎はむつを膝に座らせたまま、グラスを手に取り中身を呑み干した。テーブルの上にあるボトルを見付けると、むつはキャップを外して冬四郎のグラスを酒で満たした。
「お、ありがと」
「えー何か良いな。むつ、俺にも」
西原がグラスを差し出すと、むつは受け取ってテーブルに置いてから酒をついだ。
「むつ…ちょっと入れすぎだろ」
並々と入り、持ったら溢れそうなくらいだったが、むつはそっと持ち上げて西原に渡そうとした。少しでも揺らせば溢れそうで、西原はグラスを受けとる前に口をつけて中身を減らしてからグラスを持った。げらげらと山上が笑うと。つられたようにして、むつも少し笑った。
「むっちゃんも何か飲む?オレンジとブドウのジュースは買ってあるけど、どっちがいい?」
「…ブドウ?」
「ん、分かった」
颯介はすぐに、みんなと同じグラスに少しだけ氷を入れてブドウジュースを注いで持ってきた。
「ありがとうございます」
同じグラスなのが嬉しいのか、むつははにかんだような笑顔を見せた。